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発達障害とは
脳の働きがアンバランスに発達するなど、生まれつき脳の発達が「正常」と異なっていることで生活に支障が出る障害です。多くの場合、子どもの時期からその傾向が現れます。
発達障害とは、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害などの総称です。発達障害の患者様の脳では認知機能(記憶、思考、理解、計算、学習、言語、判断などをする機能)に偏りがあり、ある分野においては一般的な、あるいは優れた能力を発揮できても、違う分野においては極端すぎるほど苦手という場面がみられ、その落差が日常生活に支障をきたしてしまいます。
顔の作りが人によって全く違うように、脳の働きも人それぞれで個性があります。現在の社会で想定されている平均的な脳の働きを「正常」と仮定して言っているだけで、そこから外れているのは「病気」というよりは「個性」の範疇です。しかし、その個性、偏りが大きいために、生活上の困難を抱えている方が多く存在するので、そのような方を発達障害と診断して困難への対策を考えていく必要が生じます。
発達障害の診断には、専門的な心理検査が参考になることがあります。当院では心理検査を行っていないため、必要な時には他施設をご紹介させて頂きます。
自閉スペクトラム症
自閉スペクトラム症とは
以前は広汎性発達障害やアスペルガー症候群とも呼ばれていましたが、これらがまとめられ、自閉スペクトラム症となりました。幼児期に保護者などが気づくケースが大半ですが、成人になって発見されることもあります。割合としては男性の方が多く、全体として100人に1~2人程度の割合という報告もあります。
自閉スペクトラム症では、コミュニケーションに困難がある、特定の関心事に強くこだわりを持つ、といった特徴があります。例えば、人の気持ちを理解することが苦手、冗談が理解できない、表情や目配せだけだと相手の意図することが読み取れない、自分に興味のあることのみを一方的に話し続けるといったことです。なお小児の場合では、言葉が遅い(幼児期から)、目線を合わせない、人見知りをしない、相手の言葉をおうむ返しするといった特徴がみられることもあります。このほか、知覚過敏や知覚鈍感などの知覚異常を伴うこともあります。
発症の原因は特定されていませんが、生まれつきの脳機能の障害と言われ、家庭環境や育て方によって影響されるということはありません。
治療について
自閉スペクトラム症を完治させる治療法というものは確立していませんが、症状をある程度抑える目的で薬物療法を行うことがあります。また、患者様ご自身が苦労しながら自分を変えていく、周囲に合わせていく、というよりも、自分の特性について理解を深めて、自分にとって相性の良い環境で生活することを目指した方が良いようです。その結果、得意な能力がさらに伸びたり、苦手な能力も徐々に発達していく、ということが起きる可能性があります。
患者様の中には、社会にうまく適応できずに、自信を喪失したり、うつになってしまう方がいます。その場合には、抗うつ薬などを処方することもあります。
注意欠如・多動症(ADHD)
ADHDとは
不注意、多動(落ち着きがない)・衝動性といった症状が特徴の発達障害です。
ADHDの症状は、学童期(12歳未満)によくみられるもので、この症状のために学習活動に支障が出ることがあります。発症の原因は明らかにはなっていませんが、脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンが関係しているのではないかと言われています。
主な症状ですが、不注意症状として、集中することができないもしくは続かない、物を忘れるあるいはなくす、約束事が守れないといったことがあります。また多動・衝動性の症状として、じっとしていられなくて貧乏ゆすりをする、授業中など静かにしている必要がある状況でも動き回ってしまう、早口なおしゃべりを続ける、人の話が終わる前に自分の話を始めてしまうといったことがあります。
成人でもADHDの患者様はいますが、年齢と共に多動傾向は軽減する傾向があります。成人の場合では、ケアレスミスが多い、片付けが苦手、忘れ物が多い、約束が守れない、不用意な発言をしてしまう、といった悩み事がよくみられます。
治療について
薬物療法として、不注意や多動・衝動性を軽減させる薬を処方します。またこれと同時に環境調整も有効です。例えば勉強や仕事をしやすくするために机の周囲に集中を妨げる物を置かない、忘れ物をしないようにチェックリストを作って活用する、といったことです。患者様を叱責することは、あまり意味がなく、むしろ精神的な不調につながることがあるため、周囲の理解も必要です。
学習障害(LD)
学習障害とは
全体的な知能の発達にこれといった問題はなくても、「読む」「書く」「計算する」など特定の分野の学習だけが極端に困難な状態となることで、学業成績が上がらなくなるだけでなく、日常生活にも支障をきたしている状態が学習障害です。多くの場合、これらの能力が要求される小学校2~4年生頃に成績不振という形で判明するようになります。この状態が長く続けば、学業に対する意欲を失ってしまったり、自信を喪失することも考えられます。
治療について
このような場合、必要なのは教育的な支援です。例えば、読むことが困難な子どもであれば、大きな文字で書かれた文章を指でなぞりながら読むようにします。また、書くことが難しい子どもには大きな桝目のノートを使用するなどします。さらに計算が困難な子どもには、絵を用いて視覚化するなど理解しやすくなるような環境を整えるようにします。このように症状に応じて工夫をしていく必要があります。