パニック障害とは

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何の前触れもなく、いきなり苦しい発作(激しい動悸、息苦しさ、冷や汗、めまい、吐き気、しびれなどの症状が現れる)に見舞われます(パニック発作)。ただ発作そのものの時間は短く、安静にすることができれば治まるようになります。また血液検査や心電図検査を受けても異常が見つかりません。

しかし、この発作は短いとはいえ、発作時には大変つらく、人によっては死を予感することもあります(実際に死ぬことはありません。これを理解することも大切です。)。さらに突発的に起きるものなので、繰り返すようになると今度はいつ起きるのかという不安が常につきまとうようになります。これを予期不安と言います。そして、周りに助けを求められない場所(電車内や人混み など)で発作が起きる可能性を極力回避できるよう、電車やバスに乗るのを止める、人混みや外出を控えるなど回避行動をとるようになります(広場恐怖)。この予期不安や広場恐怖によって、日常生活に支障が起きる状態をパニック障害と言います。なお、パニック発作が起きていても、予期不安や広場恐怖の症状が現れていなければ、パニック障害とは診断されません。

発症(パニック発作)の原因については、ストレスや過労などが挙げられますが、これらは引き金に過ぎず、遺伝的要因(家族にパニック障害の患者様がいる)や脳の神経伝達物質の異常なども組み合わさるなどして、パニック発作が起きるのではないかと考えられています。

治療について

治療は薬物療法と精神療法(認知行動療法)があります。

薬物療法はパニック発作を抑えるために抗うつ薬(SSRI)や抗不安薬を使用します。

認知行動療法では、まずパニック発作のメカニズムを理解することが重要です。最初のパニック発作は、過労や睡眠不足があったり、ストレスや不安を抱えているといった状況でたまたま生じることが多いです。パニック発作の苦しさは強烈なので、その状況や場所に対して恐怖感を感じて、予期不安を抱くようになると、似たような状況に近づくだけで恐怖感に結びついた身体の反応が生じるようになります。
たとえば、山を歩いていて、もしも野生のクマに遭遇したとしたら、身体は硬直し、動悸が生じたり、冷や汗をかいたり、過呼吸を起こすなど色々な身体の反応が生じることでしょう。身体の反応としては、その場から逃げられるように、血液を身体の隅々に行き渡らせる(動悸)、身体が熱くなり過ぎないように冷やす(冷や汗)、酸素をたくさん取り入れる(過呼吸)、といった合理的な反応の名残りなのですが、実際にそれらが生じればパニック発作となります。すなわち、パニック発作とは、実際にはそれほどの危険がない場所でも、まるで天敵に遭遇するかのような危険な状況であると脳が認識してしまうことで生じる身体の反応なのです。治療としては、意識しないうちにそう認識してしまったものを、改めていくことが大切となります。そのために、曝露療法と言われる治療を行います。実際には、段階的曝露療法という形で取り入れます。これは電車に乗ることが恐怖の対象であれば、最初は家族に電車内に同伴してもらう、辛くなったらすぐに降りられるように各駅停車の電車に乗る、などして、容易な段階から挑戦していき、やがて誰の助けもなく一人で長時間電車に乗れるようにしていくというものです。この行動を通じて、脳の中で危険な場所と認定した状況を、本当はそこまで危険な場所ではなかった、と元来の認識に戻していくことを目指します。これは焦らずに時間をかけてゆっくりと行っていきます。また認知療法によって、認知の歪みに気づくなどして、気持ちを楽にさせるといったことなどもしていき、症状を軽減させるようにします。